猫を数える [朗読]
ショートショート「猫を数える」を浴衣さんに[こえ部]で朗読していただきました。
「猫を数える」
僕は毎日、なかなか眠れない。かといって薬なんかに頼るのも嫌だ。
それで羊の数を数えることにした。
最初はそんなのまるで漫画じゃんと思っていたのだけれど、やってみるとこれがなかなかいい感じだ。
眠る前に猫のミミに水と餌を用意して、スリッパをそろえて脱ぎ、ベッドに入り、目を閉じて、周りが一面牧草の、なだらかな丘だと想像する。そしてたくさんの羊たちも。
その羊が僕のベッドの上を飛び越していく。
羊が一匹。羊が二匹。羊が三匹……
いつも50匹まで数えないうちに僕は眠りに落ちている。
ところが最近、だんだんこの方法も効き目がなくなってきた。
羊の数は増える一方で、羊がベッドを飛び越す間隔がバラバラになったり、ヤギが混ざっていたり、羊を犬が追いかけて来たりで気が散ってしまうのだ。
とても眠れない。
とうとう本格的な不眠症になってしまった。
ベッドに入って目を閉じても、もう一面の牧草地を想像できなかった。
羊は一匹もやってこなかった。
それでも何とか目を閉じて眠ろうと努力をする毎日だった。
ある日、目を閉じているはずなのに僕の寝室が見えていた。
そしてなんと、ベッドの上を猫のミミが飛び越したのだ、規則正しく何度も何度も。
僕はその数を数えた。
ミミが一匹。ミミが二匹。ミミが三匹……
100匹をいくらか過ぎた頃だろうか。いつの間にか眠っていた。翌朝、久しぶりに爽快な朝を迎えられた。
こうやって毎晩、だんだん数える数が減って行けばいいのだけれど。
ベッドから降りると、足元にミミが寝ていた。危なく踏んでしまいそうになった。それなのにミミは動かなかった。
ミミは死んでいたのだ。
そうだったのだ。ミミは昨日の夜、僕の想像ではなく、本当にベッドを飛び越していたんだ。眠れない僕のために。
100回以上続けて力いっぱいベッドを飛び越し続け、そして疲れ果てて死んでしまったのだ。
ミミの死に顔は安らかだった。
ずっと餌をもらっていたお礼ですよと言っているのかもしれない。
おわり
「猫を数える」
僕は毎日、なかなか眠れない。かといって薬なんかに頼るのも嫌だ。
それで羊の数を数えることにした。
最初はそんなのまるで漫画じゃんと思っていたのだけれど、やってみるとこれがなかなかいい感じだ。
眠る前に猫のミミに水と餌を用意して、スリッパをそろえて脱ぎ、ベッドに入り、目を閉じて、周りが一面牧草の、なだらかな丘だと想像する。そしてたくさんの羊たちも。
その羊が僕のベッドの上を飛び越していく。
羊が一匹。羊が二匹。羊が三匹……
いつも50匹まで数えないうちに僕は眠りに落ちている。
ところが最近、だんだんこの方法も効き目がなくなってきた。
羊の数は増える一方で、羊がベッドを飛び越す間隔がバラバラになったり、ヤギが混ざっていたり、羊を犬が追いかけて来たりで気が散ってしまうのだ。
とても眠れない。
とうとう本格的な不眠症になってしまった。
ベッドに入って目を閉じても、もう一面の牧草地を想像できなかった。
羊は一匹もやってこなかった。
それでも何とか目を閉じて眠ろうと努力をする毎日だった。
ある日、目を閉じているはずなのに僕の寝室が見えていた。
そしてなんと、ベッドの上を猫のミミが飛び越したのだ、規則正しく何度も何度も。
僕はその数を数えた。
ミミが一匹。ミミが二匹。ミミが三匹……
100匹をいくらか過ぎた頃だろうか。いつの間にか眠っていた。翌朝、久しぶりに爽快な朝を迎えられた。
こうやって毎晩、だんだん数える数が減って行けばいいのだけれど。
ベッドから降りると、足元にミミが寝ていた。危なく踏んでしまいそうになった。それなのにミミは動かなかった。
ミミは死んでいたのだ。
そうだったのだ。ミミは昨日の夜、僕の想像ではなく、本当にベッドを飛び越していたんだ。眠れない僕のために。
100回以上続けて力いっぱいベッドを飛び越し続け、そして疲れ果てて死んでしまったのだ。
ミミの死に顔は安らかだった。
ずっと餌をもらっていたお礼ですよと言っているのかもしれない。
おわり
2013-02-24 11:37
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コメント(2)
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ミミの思いよ永遠なれ。と思ってしまった。、
by さきしなのてるりん (2013-10-19 19:33)
これも元はツイッター小説です。
っていうか最近の作品はほとんどがツイッター小説を元にしたものになっちゃってます。
by 海野久実 (2013-10-19 23:18)