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青い傘  [朗読]

こえ部で朗読していただきました。




わたしはずっと電話がかかってくるのを待っていた。
雨が降り続く中、雨宿りもせず公園のベンチに座っていたのでもうずぶぬれになっていた。
ポケットに入れた携帯が壊れても知らないからね。
この携帯、防水じゃないんだから。
こっちからかけなくても、傘があるかどうか心配して電話をかけて来ないあんたが悪いんだからね。

雨が急に止んだ。
同時にあたりが青くなった。
青い傘をさしかける彼の笑顔があった。

扉が開いた (ツイッター小説朗読) [朗読]

こえ部で朗読していただきました。





扉が開いた


扉が開いた。
僕が開けと思うとそれは開く。

男が死んだ。
僕が死なせようと思えばどんなに強い男だって死ぬ事になる。

世界が滅びる。
僕がそういう物語を作れば世界さえ滅びるのだ。

君が泣いた。
君が僕から去って行った。
もう二度と会えなかった。
僕の中の君の思い出は、どうにも書き変えようがなかった。

猫を数える [朗読]

ショートショート「猫を数える」を浴衣さんに[こえ部]で朗読していただきました。


「猫を数える」


僕は毎日、なかなか眠れない。かといって薬なんかに頼るのも嫌だ。
それで羊の数を数えることにした。
最初はそんなのまるで漫画じゃんと思っていたのだけれど、やってみるとこれがなかなかいい感じだ。
眠る前に猫のミミに水と餌を用意して、スリッパをそろえて脱ぎ、ベッドに入り、目を閉じて、周りが一面牧草の、なだらかな丘だと想像する。そしてたくさんの羊たちも。
その羊が僕のベッドの上を飛び越していく。
羊が一匹。羊が二匹。羊が三匹……
いつも50匹まで数えないうちに僕は眠りに落ちている。

ところが最近、だんだんこの方法も効き目がなくなってきた。
羊の数は増える一方で、羊がベッドを飛び越す間隔がバラバラになったり、ヤギが混ざっていたり、羊を犬が追いかけて来たりで気が散ってしまうのだ。
とても眠れない。
とうとう本格的な不眠症になってしまった。
ベッドに入って目を閉じても、もう一面の牧草地を想像できなかった。
羊は一匹もやってこなかった。
それでも何とか目を閉じて眠ろうと努力をする毎日だった。

ある日、目を閉じているはずなのに僕の寝室が見えていた。
そしてなんと、ベッドの上を猫のミミが飛び越したのだ、規則正しく何度も何度も。
僕はその数を数えた。
ミミが一匹。ミミが二匹。ミミが三匹……
100匹をいくらか過ぎた頃だろうか。いつの間にか眠っていた。翌朝、久しぶりに爽快な朝を迎えられた。
こうやって毎晩、だんだん数える数が減って行けばいいのだけれど。
ベッドから降りると、足元にミミが寝ていた。危なく踏んでしまいそうになった。それなのにミミは動かなかった。
ミミは死んでいたのだ。
そうだったのだ。ミミは昨日の夜、僕の想像ではなく、本当にベッドを飛び越していたんだ。眠れない僕のために。
100回以上続けて力いっぱいベッドを飛び越し続け、そして疲れ果てて死んでしまったのだ。
ミミの死に顔は安らかだった。
ずっと餌をもらっていたお礼ですよと言っているのかもしれない。


おわり
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